【不妊治療】 タイミング
卵胞の発育についての基礎知識
ホルモンの基礎値
生理の1~3日目に来院していただき、血中FSH・LH・PRL・E2・ Tをはかります。これが基礎値になります。
卵胞成熟
E2の値が高くなり血中濃度が卵胞1個あたり200pg/ml前後を示すようになります。
排卵
卵巣の卵胞が20-23mmになりますと、卵胞が破け、成熟した卵が卵胞の外に排出されます。
排卵が起こりますと、大きかった卵胞が超音波診断画像から見えなくなります。これを排卵と考えます。
まれに、卵が卵胞の外に出ないで高温期になってしまう、未破裂卵胞内排卵(LUF)が起こります。
排卵後は、P4が上昇し、基礎体温は低温期より0.3℃上昇します。
1.排卵日を知るために!
排卵を知るのに大切なことは基礎体温をきちんとつけることです。
基礎体温をもとに、超音波による卵胞測定・尿中LH判定・血液中エストロゲン測定などを適時行い、排卵日を予測します。
超音波で発育してきた卵胞(卵胞とは卵子が入っている袋で、超音波では丸く黒く写ります)が、20mmに達すると排卵直前であると予測されます。
また、血中のホルモン測定 (E2・P4)も排卵予知には重要になりますが、当院では、これらのホルモン値を30分で測定できる装置がありますので、正確かつ迅速な検査が治療に役立ちます。
月経の1日~3日目に来院して卵胞が小さいか確認し、自然か、排卵誘発剤を使用するか相談します。
明らかに排卵障害や生理不順を認める方は、ホルモン剤や排卵誘発剤(状況により内服薬や注射など)が必要です。次の来院は、月経の10日目前後になります。
注射で排卵誘発する方は、月経の3日目~5日目から連日、または1日おきで注射をします。
(休診日も注射します。)
2.排卵日少し前から性交渉を
※排卵前に月1回だけ性交渉を持つより、排卵日を気にせずに頻繁に性交渉がある方が、妊娠率が高いことがわかっています。性交渉の日を指定されることがプレッシャーになる男性も少なくないです。
3.排卵が起こったか確認を
排卵誘発剤について
◆内服薬/クロミフェン
軽い視床下部性の排卵障害や多嚢胞性卵巣(PCO)などに有効な脳下垂体に働きかけるタイプの排卵誘発剤です。
現在もっとも広く使われています。
ただし副作用として、頸管粘液が少なったり、内膜が薄くなったりすることがあります。
◆内服薬/フェマーラ、レトロゾール
フェマーラ、レトロゾールは排卵誘発剤としてクロミフェンに匹敵する排卵誘発効果が得られています。
フェマーラ、レトロゾールは、クロミフェンの副作用である子宮内膜が薄くなったり、頚管粘液が減少したりといった副作用は少ないです。(その理由はフェマーラの半減期は45時間であるのに対して、クロミフェンは5日~3週間ほどあります。半減期が短いため抗エストロゲン作用の副作用がでにくいと言われています)
◆注射/hMG(FSH)ゴナール
クロミフェン製剤で効果がなければ、hMG(ゴナドトロピン療法)を試します。hMG製剤やFSH製剤は、人間の脳下垂体前葉から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)の働きを、外から注射で加えることにより強化するものです。
患者さんごとに処方内容が違うので、多胎やOHSS(卵巣過剰症候群)といった副作用は少ないですが、若い方、PCOSの方では多数の卵胞が大きくなり、誘発がキャンセルになってしまうこともまれにあります。
◆尿中ホルモン検査
排卵直前に尿中の黄体化ホルモン(LH)を測定することにより、超音波検査との併用により排卵日前日からも排卵日が予知出来ます。月経終了以降に診察にいらした方は、採尿して診察をお待ちください。
◆血液ホルモン検査
卵胞が大きくなったら、E2を測定し高ければ成熟卵胞と考え、排卵が近いことがわかります。
卵胞の消失が確認できない場合は、プロゲステロン(P4)を測定し、高ければ高温期と考えます。
◆hCG注射
この注射はLH(黄体化ホルモン)様の作用を示し、排卵前に投与すれば約24~36時間後に排卵を促す注射です。
「性交や人工授精のタイミングを正確に合わせるための注射」と理解してください。